お姫様がふと気がつくと、お城の中にはだれもいなくなっていました。
そんなはずありませんよね、お城の中ってたくさんひとがいるものなんですよ。
でもだれもいなかったのです。
お姫様は少し心配になって、王様を探しましたが、王様も、いないのです。
こんなことは今までにありませんでした。
でもおしとやかなお姫様は、大きな声を上げて人を探したりはしませんでした。
あくまでもしとやかに、足音も立てずに歩いて探したのです。
そのとき、ばあん、と大きな音がして、ホールのとびらが開きました。
ちょうどホールのすみを足音も立てずに歩いていたお姫様はとてもびっくりしました。
でももちろん、大きな声をあげたりはしませんでした。
「ポポロン姫!あなたの夫になるりっぱな男が来ましたよ!」
(そうそう、このおしとやかなお姫様の名前はポポロン姫っていうんですよ)
大きな声を上げたのは、見るからに恐ろしい、毛むくじゃらの大男でした。
いえ、大男のような格好をしたけだものでした。
鼻はオオカミのように前に伸び、とがった牙が耳までさけた口からぞろりと並んでいました。
顔も手足も毛だらけで、手には汚くとがった爪が生えています。
服こそ、おしゃれで、金糸や銀糸をふんだんに用いたものを着ていましたが、そのけだものはどう見ても、ドドラリア王国の第三王子なんてものではないのでした。
それは、悪い魔法を使い、お金をどこからかむしりとり、周りのひとたちを恐怖におとしいれて生きているけだもので、どうやら王様はなにか弱みを握られているか、お金をたくさんもらったかしたのでした。
なんてことでしょう、王様はおしとやかなお姫様を、国のためだか自分のためだか、そのけだものに差し出したのです!
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