夫となるお方がけだものであることを見て取ったお姫様は、そっとその場を離れました。
そして衣装室に行き、できるだけやわらかい、優美なドレスを選びました。
そのドレスはていねいにたたんで、小さな包みにしました。
そのドレスに合った靴も、忘れずに包みに入れました。
けだものはお姫様のお部屋の方に上がって行きました。
お姫様のお部屋は、お城で一番高い塔のてっぺんにあるんですよ。
「どこですか!いとしのポポロン姫!」
お姫様は、今度はお姫様付きの侍女の部屋に行きました。
侍女はやっぱりいませんでしたが、侍女がいつも着ているドレスがありました。
お姫様はそれを着て、長いきれいな髪の毛を、きゅっとしばって侍女のボンネットの中に入れました。
けだものはお姫様の部屋に誰もいないことに気がつきましたよ。
「どこだあ!返事をしろ、ポポロン姫!」
けだものは、イライラしている様子です。
「はい」
ポポロン姫はおしとやかに答えました。
でも、侍女の部屋を出ようとしていたところでしたから、当然けだものには聞こえませんでした。
「おびえてかくれているんだな…!すぐさま出てこないと、ひどい目にあわせるぞ!」
お姫様は静かにほほ笑みました。
そしてもう一度まわりを見回して、誰もいないのを確かめてから、お城の正面の門に向かいました。
そこにも誰もいませんでした。
実はお城のみなさんは、お城の裏口に集まっていました。
正面はけだものが来ますからね、怖かったのです。
裏口にいたのは、もしもお姫様が裏口から逃げようとしたときに、お気の毒ながら捕まえて、お城の中に戻すためでした。
さて。
お姫様は走り出しましたよ…。
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