あるところに、とても美しいお姫様がいました。
まつげは長く、大きな瞳をやさしくふちどっていました。
くちびるはまるでバラの花びらのよう。
長い長い髪は腰まで伸び、いつもすその長いきれいなドレスを着ていました。
そう、お姫様は、とてもおしとやかな方でした。
とてもとてもおしとやかなので、誰がなにを言っても静かにほほ笑むだけでした。
疑問を感じたときにはちいさく首をかしげました。
でも、それだって滅多にないことなのでした。
“言い返す”なんて、とんでもない。
生まれてから一度もしたことがないのでした。
ある日、お父様である王様がお姫様に言いました。
「そろそろお前も年頃なのだから、夫を持たなければならない」
お姫様は、静かにほほ笑みました。
「わが国は小さくて、貧乏だ」
お姫様は、静かにほほ笑みました。
「そのため、お前の夫は金があり、力のある男でなければならない」
お姫様は、静かにほほ笑みました。
「ドドラリア王国の第三王子をお前の夫とすることにした」
お姫様は、静かにほほ笑みました。
そして、その日は突然やってきました。
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