お姫様はなにしろおしとやかな方でしたから、そんなに走ったのは生まれて初めてでした。
しかし、やってみないとわからないものです、お姫様は天性のスプリンターだったのでした。
お姫様は軽く軽く、飛ぶようにお城から離れていきます。
エレベーターもない、広いお城をひたすら歩いて移動し(なにしろお姫様のお部屋は高い塔のてっぺんだったんですから)、日々広大なお庭を散歩して過ごしたお姫様です。
ほっそりしたふくらはぎにはししゃもの腹のような筋肉がついていました。
始めのうちは、侍女のドレスを足に絡まないように、しかし必要以上に肌を見せないようたくし上げて走っていましたが、途中でお姫様はそれではとても走りにくいことに気がつきました。
あっという間に城下町についたお姫様は、たてものの陰に隠れて息を整え、そばに干してあった動きやすそうな服を拝借しました。
もちろんお姫様ですからね、その服があった場所には、ダイヤのついたイヤリングを片方、ぶら下げておきました。
その頃には、お姫様のお部屋のあるお城の塔は、がれきと化して崩れ落ちていました。
どうやらけだものは暴れたようですね。
さあ、おしとやかなお姫様は本格的に走りますよ!
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